出発までの計画と準備 

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福岡空港を19時45分発エミレーツ航空、名古屋、ドバイ経由でチューリッヒへ
 
      




 

  夢が現実に変わる日を思い浮かべながら、すこしずつ少しずつ準備を重ねていくときの幸せなこと。
1年近くと長いようだったけど、でも決して長くは感じなかった。

最初はまったくごちゃごちゃで覚えられなかったスイスの地名が、場所が、英語表記でだんだんわかるようになり、英語で届くメールも後の方では辞書なしで勘で読めるようにまでなった。もっとも私の質問に対する答えなので、わからないとおかしいのだけど。

たいしたことでもないけど私にしては進歩。その苦戦の様子を紹介します。
 
 

旅のスタイルは
  個人旅行で決定










スイスへ行こうと決めたのは1年くらい前だった。いつかは行きたいとずーっと思い続けていたのでスイス関連の本はあれこれ読んでいた。魅力はいっぱい、でも簡単に決められないたくさんのハードルがあって、いつそれをクリアできるかが一番のポイントとなっていた。

さて、気持ちは大きく膨らむが何からどう準備を進めていいかわからない。ネットやガイドブックで情報はふんだんに手に入れることはできたが、でも自分が、となると、はたと脳の動きが止まってしまう。時間はたっぷりある。一歩一歩あせらずにと自分に言い聞かせる。

まず計画を進める上での大まかなポイントを書き出してみた。今回の旅のスタイルである。
期間は、予算は、何をしたいかなどを書き出していくうちに自分の希望する(妥協する)スタイルがだんだん見えてきた。

私たちにとって最大のネックは予算だった。唯一自慢できる財産は時間、たっぷりある。見たいこと、やりたいこともあふれるほどあった。小さい器に入れたい宝物がいっぱいという感じ。袋いっぱい入れていくら、のスーパーのバーゲンを思い出しながら、おばさんパワーで頑張らなくっちゃーと俄然元気が出てきたものである。

できるだけ予算を抑えながら、でも目いっぱい楽しむためにと考えれば、初めてで不安はあったが個人旅行で行くしかなかった。しかしドイツ語はおろか英語も片言程度。列車に自分たちだけで乗れるのだろうか、宿までたどり着くんだろうか、何かトラブルがあった時どうすればいいのか、考えれば考えるほど無謀な計画に思えた。迷って、不安になってツアーのパンフレットを引っ張り出してはたたみこむ、を何回繰り返したことか。でもそのたびに行き着くところは、ツアーでは自分の夢の実現は難しい、もしかしたら最後のチャンスかも知れないのにとの思い。準備のスタート地点にさえも立たないうちにだめと考えるのは止めよう、計画していく途中でどうしても無理と確信したときはその時にまた考えることにしようと、とにかく先に進めることにした。

1 予算は2人で100万円以内(ツアーであれば10日間程度だろう)
2 期間は1ヶ月程度(時期は山岳鉄道全開の7月から9月ころまでの間)
3 個人旅行で宿泊はホリデーフラット
4 ハイキングをメインに四大鉄道の絶景も楽しみたい

で大筋決定。

滞在地の選択






 

今回のメイン目的はハイキング三昧。真夏なのににその頂きを真っ白な雪で覆われたアルプスの山々、その絶景を映す美しい湖、果てしなく広がるハイジの里のイメージのお花畑、(見たこともないのに頭の中は鮮明なイメージが溢れている。)そんな素晴らしい自然に包まれながら、そしておいしい空気をいっぱい吸いながら思いっきり歩き回りたい。一週間単位のホリデーフラット滞在は拠点として魅力的なコースがたくさんあるところ。加えてスイス全土に張り巡らされた鉄道網を駆使して、できるだけ広く足を伸ばしたいとの思いも強かった。結果、
東方に位置するサンモリッツ、中央がグリンデルワルト、南方でツェルマットを候補にあげた。初めての訪問であることで、日本語観光案内所のある日本人に人気の町ということと、ドイツ語圏ということも選択肢に大きく影響した。




ホリデーフラットの予約








 

ホリデーフラットはすべてスイス政府観光局のホームページから手配した。3地域の中から予算と人数と部屋数を入力し候補のフラットを検索する。その中で星の数、簡単な説明、値段などを見比べながら決めるのだが、それがまた初心者にはなかなか難しい。駅やバス停に近そうなところ、買い物に便利そうなところ、できれば山が見えるところと自分なりに基準はあったが、地図がなく簡単な説明ではなかなか判断が難しかった。今思えばほとんど勘に頼って選んだ。予約のフォームはさまざま、BOOKのボタンを押してそのまま予約フォームに入力するだけの簡単なもの、メールアドレスから必要事項を書いて送信したもの、ホームページから申し込んだものなどさまざまだ。

空室を確認してオファーを出したのに予約済みだったり、もたもたと決めかねているうちに埋まってしまったり、条件のいいものがどんどん消えていくようで焦ってしまった。翌年の7月分の予約を前年の9月にしてこの状態である。条件の良い物件を探したいなら1年前からの準備でも早くはないと感じた。もっとも予算を惜しまずに選ぶのなら別の話になるだろうけど。

断りの返事が来たフラットに空室の日を聞き返したり、当初予定していた周遊コースを変更したりして、やっとさっとの末何とか調整し10月末には予約がすべて完了した。
サンモリッツ7月5日~12日、ツェルマット12日~19日、グリンデルワルト19日~26日。日程変更やその他の詳細のやり取りにかなり神経をすり減らしくたくたになった。何せすべて英語でのやり取り。私の英語力は中学レベル以下。学生時代に使っていた小さい文字ぎっしりの辞書(それも表紙は剥がれてとれてる哀れなもの)に頼りながらここ一番を乗り切らねばと歯を食いしばって頑張った。おかげでただでさえまともでない視力がさらに悪くなってしまった。さらに拍車をかけたのはドイツ語で返事が来たこと。友人に頼んで翻訳してもらったものの現地に行ってから片言の英語は通じるのかしらと不安にかられた。ドイツ語はわからない、とメールで送ったら、そちらからは英語でどうぞ、書けないけど読めるからと返事が来た。

3つのうちサンモリッツだけは不動産会社の仲介だった。こちらはデポジットをすぐに払い、翌年の3月末には全額カードで支払いを済ませた。怪我か病気にでもならない限り絶対行くつもりでいたから3ヶ月前の決済も気にはならなかった。しかしこの早目の支払いが幸運だったのだ。カード払いの明細は1フラン101.31円で換算されていた。現地で現金で支払うより1フラン10円程度安く済んだ計算。トータルで539フラン払っていたので、5390円儲かったのだ。残りの2つはオーナーと直接やり取りしている感じで契約を交わしただけで支払いは現地でいいらしかった。もし私が直前にキャンセルしたらどうなるのだろうと余計なことを心配していた。

そんなこんなで神経をすり減らしながら、何とか一区切りがついたなという時になって、なんとネット上に翻訳サイトがあるのを見つけたのである。それまでの苦労は何だったのだろうと悔しかった。何でもそう、知ってるのと知らないことの差、こういうものなのだ。無駄骨も何かの役に立つだろう。




行程プランの作成




 
スイス政府観光局から郵送してもらったパンフレットと購入した数冊のガイドブックから人気のハイキングコースを選び、自分たち流にアレンジして行程表を作成した。滞在地ごとに晴れの日プラン、雨の日プランで1週間分づつを表の中に入れて行った。まだ行ったことも無いのに写真がたっぷりあるので現地を歩いている気分になって来てこの時が一番楽しかった。一応雨の日プランもあるが、気持ちは毎日ハイキングー。

人気の氷河エキスプレス、ベルニアエキスプレス、ゴールデンパスラインの絶景列車の旅も旅程にしっかり確保。

スイス国鉄のホームページから列車、バスの時刻表が簡単に見れたのが便利だった。朝の出かける時間からホテルに帰る時間まで大まかにタイムテーブルが組めるなんてほんとに素晴らしい。

現地に行ってからプランを立てるのでは時間がもったいない、と思ってかなり細かにスケジュールを組んだのは正解だった。現地では行動日の前日にルートの確認をするだけでよかった。一日だけコースを変更したがほぼ予定通り効率よく消化できたと思っている。

スイスの鉄道は時間が正確と聞いていたが、でもやはり初めての地、始発、到着の時間だけを頼りにするのは危険である。途中駅を確認しながら行こうと、この行程表にはすべて途中駅と通過時刻をプリントアウトして添付した。
飛行機のEチケットのコピーから滞在フラット・ホテルの契約書、地図、3滞在地ごとに行程表と時刻表、村内地図、スイスパスの路線図、などコピーしてひとつのファイルにまとめ、同じものを2部作った。エンガディンバスの路線図、通過時刻一覧表まで入れた。70ページにもなった。1年間の準備の結果をこの一冊のファイルに凝縮させ、出発まで二人で何回も確認した。




航空券の予約 







7月出発福岡発チューリッヒ行きの格安航空券のネット上での発売開始を首を長くして待っていた。2月末、やっと出た。タイ航空で格安があった。すぐに電話をかけた。しかし売り切れ。そんな馬鹿な、一日に何回もサイトを開いて確認していたのに公開されてすぐに売り切れなんてサギや、と思ってみてもないものはない。話を良く聞くと行きは空席があるが7月末から8月にかけての帰りの便がすべて満席なんだと。こんな時のために宿の手配は3週間にしていた。前後に融通を持たせて1ヶ月の範囲で探してもらうがまったく駄目。夏休み中なんだ。キャンセル待ちはできないという。

結局ツアー会社の薦めにしたがっておよそ倍近くする次に安い航空券を予約した。しかしこれもこの時点では空席なし、でもキャンセル待ちができるという。確率は高いらしかった(なぜわかるんだろう)。そしてほかのところで重複申し込みはしないようにと念を押された。

待つこと2週間あまり、何の連絡もない。気が気ではない。航空券が買えないとすべてオジャンになってしまう。電話をするとまだキャンセルがないと。念のため再度格安サイトを開いてみた。なんと依頼しているものより安いプランが出てる。すぐまた電話をしてたずねると空席があった。その航空券に変えて欲しいというと、福岡からだと国内追加料金が要るので返って高くなるという。福岡発で検索かけたのに、と不審に思いながら電話を切り別の会社に聞いてみた。もちろん福岡から追加なしでOKだった。先の予約をキャンセルしたのは言うまでもない。

最初に依頼したツアー会社はこれまでに何回も利用したことがあり、大手の最も信頼できるところと思ってただけにショックだった。でもそこでひとつ勉強した。何にでも通じることだと思うが、信じている人,ものなどその一本だけにいつもいつもすべてを委ねる危険性(大袈裟)。自分を守るためには自分の判断で常に柔軟に取捨選択できる能力を備えておくことが大切であるということ。自分のために最善の選択をしてくれるのは自分だけなのだ。呆けられない。

7月3日発エミレーツ航空、福岡発チューリッヒ往復26日間で無事航空券確保。これで確実にスイスまでは行ける。3月8日だった。7月4日と26日の宿泊はこれもネットでチューリッヒのホテルを予約した。




スイスパスの購入



 
3月末にはスイスセーバーパス1等22日間有効を購入した。スイスカードや半額カードなどの情報もあったが、いちいち切符を買う煩わしさを考えると比較に値しなかった。ホームページの情報で1等は比較的空席があると書いてあったので、夏休み中でもあり席がとりやすいように1等を購入した。

このパスは売り切れとかなくいつでも買えるので急がなくても良かったが、毎月料金が変わっているので、原油高が運賃に反映するのかと勝手に勘違いして早く買ってしまった。後でわかったことだがスイスパスの料金はドル建てで毎月でなく1年に一回だけ変わるそうだ。日本で購入する料金が毎月変わるのは為替の影響。3月末に慌てて買ったが2日後には値が下がり、翌々月には大幅に値上がりした。(これも運)
スイスでも購入できるが日本で買ったほうが安いのは、これも為替の影響なのかな。




鉄道座席の予約 









スイスパスもゲットできた。あとは氷河急行、ベルニナ急行、ゴールデンパスパノラマの座席予約を残すのみになった。乗車日の2ヶ月前からオーダーできるということは知っていた。が、スイスパスが手元にないと予約できないと思い込み、送られてくるのを待っていた。ちょうど出発の1ヶ月前の同じ日、航空券のEチケットとスイスパスが送られてきたのですぐに同じ旅行代理店に依頼した。やっぱり遅かった。2等はあるが1等は売り切れとのこと。1等は比較的に空いていると聞いていたのは嘘だったのか。スイスパスを扱う代理店を探し全部に問い合わせたが同じ。当たり前、みなレイルヨーロッパジャパンを通して手配しているとのこと。では2ヶ月前丁度に依頼していたら1等が取れたのかと、それから2ヶ月先の日付で検索してもやっぱり1等はすべて売切れの表示だった(???)。納得いかなかったけどどうしようもない。1等と2等の乗車料金の差は氷河急行だけでも1万円くらいもある。指定券の料金は1等も2等も同じ。乗り心地でどれくらいの差があるかわからないが、乗車券があるのにみすみすランクを落としたくない。

もしかしたらスイスに行ったら現地では指定券が買えるのではないだろうか、もしそれでも駄目だったら同じ線を走る普通列車で我慢するだけと日本での購入をあきらめた。

とは言うもののやっぱりあきらめきれない。氷河急行の赤い車両を写真で見るたびに何とかならないかと考えてしまう。そうしているうちにスイス国鉄に直接メールしてみようとひらめいた。もうこのときは翻訳サイトという助っ人があったのでメールを送るのは億劫でなかった。ダメモトでするのだから気は楽。しかし返事はすぐに来た。
期待してなかっただけに、驚いた。氷河急行とベルニナ急行の分だけの依頼で出していたが、それぞれの予約受付アドレスが記されてあった。別々に予約するんだなと思い2箇所に送ったが、そのあとのやり取りでどうも同じところに行ってるみたいだった。それではとゴールデンパスも追加したりしたものだから、途中でごちゃごちゃなってしまった。後で考えると氷河急行とベルニナ急行は同じレイティッシュ鉄道で良かったのだが、ゴールデンパスラインは会社が違ったのだ。そんなこと知らないとはいえ、レイティッシュ鉄道のレイルサービスに全部依頼してしまった。何回もやり取りしながら時間はかかったが結局はまとめてすべて確保できた。無茶なお願いにも丁寧に対応してもらった。

氷河急行とベルニナ急行は何の問題もなく希望通りにOK。ゴールデンパスの方は1週間のうちの最後の日だけしか空きがなかったが、無事すべて1等で予約が完了、Dossier number:が送られてきた。少し手間取ったが日本で買えなかったおかげで、高い手数料も払わなくて済み、原価で現地の駅で料金を払って指定券を受け取った。Rhatische Bahn Rail Service からのメールはとても親切だった。



まさかの備え


 
これまでの海外渡航先はほとんどが東南アジアで、所属している会の支部があったり、そのほかの地も短期の旅だったのでリスクに対する心構えなど考えたこともなかった。しかし今回は別、自己責任ですべて対処しなければならなかった。パスポートを亡くしたら、病気や怪我をしたときは、二人がはぐれたらと、考えると次々に心配になることが出て来た。今回初めてクレジットカードのサポート内容をじっくり調べてみた。なんと緊急医療サービスや困ったときの相談が日本語でできるサービスがあるんだ。グリンデルワルトにはトラベルデスクまであった。
カード会社の海外サービスガイドを大事なところに付箋をつけて持参することにした。

また加えてまさかのときに駆け込めるよう、ツェルマットとグリンデルワルトの日本語観光案内所の連絡先もしっかり控えた。携帯電話も二人で店舗に出向き2台とも海外で使えるようにしてもらった。料金は高くなるが、そのまま国内と同じように電話がかけられるのでとても便利そう。これではぐれても大丈夫。
 


持参したもの 







初めての自炊滞在生活、このための情報がなかなか収集できなかったので、ホームページを公開されているお二人の方にメールをお送りして、持参した方が良いものなどをお聞きした。意外だったのは炊飯器を持って行ってるということ。あんな嵩張るものをですかと思わず聞き返してしまった。もちろんお米も。海外対応炊飯器はネットで買うようアドバイスを受けた。

そのほかにも包丁や調味料は持参した方が良いなど詳しく教えてもらった。ありがたいことに滞在予定のフラットの名前を言ったらグリンデルワルトのシャレーのおおよその場所まで教えてもらった。グリンデルワルトのシャレーは住所が最後までわからず(詳細な住所がないようなのだ)困っていた。あとの2箇所は住所を教えてもらってたのでGoogle Earth で調べて大体の見当はついていた。

自炊用として次のようなものを用意した

 ・電気炊飯器(海外仕様のもの)
 ・米
 ・調味料(だし醤油、酢のものの酢、味噌、中華だし、ほんだし、コンソメ、塩、砂糖、胡椒)
 ・インスタント食品(五木やきそば、長崎皿うどん、カレールー)
 ・乾燥わかめ、梅干、たくあん、かつおぶし、紫蘇昆布、塩昆布
 ・焼き海苔、ふりかけ、お茶漬の素
 ・お茶、紅茶、お茶パック
 ・箸、包丁、冷蔵庫用食品保存容器、折りたたみ弁当容器
 ・サランラップ、布巾、食器用洗剤、スポンジ

 塩と胡椒、食器用洗剤、スポンジはどこのフラットにも使い置きがあったが、それ以外はもって行って良かった。

スイスに行ったら自炊は楽しいですよ、とのエールをいただいていて、すごく楽しみにしていたがまったくそのとおりだった。



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